密林を抜けると、開け放たれた大きな窓が目に入った。
遊びに来たわけじゃなし、玄関を探してノックする必要はない。
景時は彼を待っていたかのようなその窓から、薄暗い洋館に足を踏み入れた。
ところどころ床が抜けた室内に散らばる、空き缶、吸い殻、お菓子の袋…
どうやら夜遊び好きな若者の、溜まり場になっているようだ。
(危ねーな…
いつか崩れて下敷きになンじゃね?)
管理が行き届いていないのだろう。
ここなら潜伏も可能だ。
ここにいる…
景時は洋館の探索を開始した。
独特の饐えた臭いに顔を顰めながら、手当たり次第に扉を開けていく。
深雪の名を呼びながら。
敵に自分の存在や居場所が丸わかりだが、構っていられない。
腐った床がミシミシ鳴り放題のこの廃屋で、慎重に気配を消すような時間の余裕はないのだ。
それに、この場所に景時を招いたのは深雪本人。
堂々と行こうがコソコソ行こうが、どっちにしろ掌の上なのだから。