隣県のちょっとした森の中に存在する、朽ち果てた洋館。

メモに書かれた住所が指し示した場所だ。

華族のお姫様が住んでたとか、そのお姫様が神隠しに遭ったとか、噂が噂を呼んで近所の子供たちには有名なお化け屋敷。

クオリティの高い建築様式やロケーションから、廃墟マニアもよく訪れる物件。

だが景時がそんなことを知るよしもないし、知っていたとしてもなんの感慨もない。

鎖がグルグル巻かれた門扉を荒々しく蹴破り、雑草が伸び放題で密林のようになった庭に侵入した。