「違… 景時…」


景時の言葉を聞き逃さなかったうさぎが、力なく彼を見上げた。

メモを掌に収めて拳を握りしめた景時の蒼白な顔は、まるでデスマスク。

昏い焔を灯した瞳は、まるで狂人。


(そんなそなたは、見とうない…)


うさぎは色を失っていく唇を震わせ、微かに首を振った。


「景時… 聞いてくれ…
そなた…は、勘違いを…」


「うさぎ、待ってろ。
今すぐ術者を殺ってくる。」


「待て…
待ってくれ…
景時、景時…」


手を伸ばして、必死にナニカを訴えようとするうさぎを振り返ることなく、景時は部屋を出る。

抱きしめたい。

謝りたい。

一緒に苦しみたい。

でも、その前に…

呪は既に発動したようだ。

だが術者が命を落とせば、無効化できるはず。

一刻も早く、うさぎを救う。
一刻も早く、術者を殺る。

一刻も早く、深雪を‥‥‥

ごめんね、うさぎ。
俺がバカだった。