オニの襲撃があってから、二週間が経った。

あれ以来、学園に異常はない。

警戒態勢が敷かれたためか、本当にただの偶然だったのか、それとも他に理由があるのか…
その辺は謎に包まれたまま。

必死の捜索にも関わらず、深雪は完全に消息を絶っていた。

秋時の顔利きで確認したところ、パスポートを使った痕跡はないようだ。

姿を消す。
それだけでも疑いは濃厚。

その上、秋時から上がってきた彼女の報告書ときたら…


「薫ちゃーん?
ガリガリくん溶けてるよー?」


初夏の陽射しに肌を焼きながら、景時は例の報告書を読みふける薫に声をかけた。


(…
聞いちゃいねぇよ。)


授業時間真っ只中の屋上。

柵を背もたれ代わりに座り込んだ景時は、青い空を見上げて溜め息を吐いた。