赤い月 肆


景時はうさぎの視線を感じながらも、白いソファーで項垂れたまま動けずにいた。


「あの、深雪という娘を疑っておるのか?
景時も?」


もう激昂していない、静かな低い声。

疑ってる?
深雪さんを?

どうやってオニを連れて来たのかわからない。

オニを三体も飼い慣らす方法もわからない。

どうして深雪さんがそんなことが出来るのかも、サッパリわからない。

でも、あの場にいた。

いるはずのない彼女がいた。

そしておそらく無傷で逃げた。

その上、うさぎを良く思っていないだろう。

俺のせいで‥‥‥


「もしなにもかもが偶然でなかったとしたら、状況的にいって可能性があるのは…」


景時は言葉を切って、唇を歪めて笑った。

自分で言ってて、ウケる。

『もし』『状況的』『可能性』

曖昧すぎンだろ。

歯切れ悪すぎンだろ。