机に掛かった、文房具などほとんど入っていないリュックからバジュラを取り出して顔を上げると、薫も鞄の中を漁っていた。
二人は視線を交わして教室を飛び出す。
「体育館か?」
「たぶん。
三体いる。
それと‥‥‥うさぎも。」
傘も差さずに中庭を走り抜けた時、校内放送が聞こえた。
『近隣から、不審者が校内に入った可能性があると通報がありました。
生徒の皆さんは至急教室に戻り、担任の指示に従って待機して下さい。
繰り返します‥‥‥』
慈愛学園の理事長であり、景時の祖父である、高杉秋時(タカスギアキトキ)の声だ。
同じく鬼気を察知し、生徒の安全確保に動いたのだろう。
すぐに僧である教師たちの手で、校舎に結界が張られるに違いない。
これで体育館付近は治外法権。
遠慮なく狩りが出来る。
だが…



