赤い月 肆


(ナニやってンだ、俺は。)


好きな人に、あんな辛そうな顔をさせるなんて。

ドアに背を預けたまま、ズルズルと崩れるようにしゃがみこむ。

俺ってヤツは…
バカだろ。
本気でバカだろ。

いつもみたいに『阿呆』って言えよ。

なんでそんな心配そうにしてンだよ。

悪いのは俺なのに。

とんでもねぇコト考えて、酷いコトしたのに。

優しくなんてされたら、罪悪感で死ねる。

責めてくれよ。
叱ってくれよ。

叱ってくれれば、逆ギレのテンションで『行くなよ』って言えるのに。

‥‥‥言えるのか?

本当に?

うさぎは鬼。
俺は人。
アイツは‥‥‥鬼。

『鬼と人とは相容れぬ』

今ココで、まさかのコレ?

もう誰も覚えてねぇよ。
やめろよ。
関係ねぇよ。

こんなに好きなのに。

壊れそうなほど…壊してしまいそうなほど、好きなのに。