「今のは転移術。
いずれはお前も使えるようになるだろう。
名前は…健だったかな?」

男の言葉に俺はうなずいた。

「わしの名前はパンドラ。
統べる力を持っている。
とても弱い力だがな」

「パンドラって…」

俺は海を見た。

「俺のお爺ちゃんだよ。
ミドルネームはお爺ちゃんからもらったんだ」

海は俺の隣に並んで言った。

「ここへ呼んだのは他でもない。
我々と共に戦ってほしいからだ」

「は?」

思わず言ってしまった。
当然だろ?
だって平凡に大学に通って、
夜中にピザ配達してたのに、
そんなリアリティのないこと言わないでくれよ。


「いきなり言われてもリアリティないよねー」

海がへらへらと言った。

「海も戦うの?」

「俺はねー、
秘密兵器だから普段は戦わないのよ」

俺の問いに海が答えた。

「さっき桜も言ってたでしょ?
抑えてなきゃ洪水になるって。
持ってる力の量が多すぎるからなんだよね。
だから、
もうどうしようもないってなったときに、
敵を壊滅させるために今ここにいるの」

海は俺の隣でモニターの映像を見ながら教えてくれた。

「何から話すの?」

「うむ、まずはわしの話から…」

「ねぇ、桜が転移したのどこ~?」

海はパンドラの話を聞かずにモニターの方に行ってしまった。
この話には興味がないようだ。

「あいつは生まれたときからここにいる。
なぜ戦っているのかよくわかっているだろう」

「生まれたときからここに?」

「そうだ。
私たちは力を持つ者を奴から守っている。
海は生まれたときから力を持っていたので、
すぐに親元を離れいままでずっと私とここにいる」

「奴って誰だよ。てか力って…」

俺が質問しようとすると、
パンドラは片手を挙げて止めた。

「この世界には自然の力が溢れている。
太陽、月、海、大地…それらはお互いにバランスをとりながらこの世界を構成している」

パンドラは俺の周りをゆっくりと歩きながら話した。

「あるとき、
そのバランスを崩す者が現れた。
その者は操る力を持っていた。
自然は操られ、
自らの力を制御することが困難になったのだ」

「お爺ちゃん、話長いよ。
桜がそろそろ接触するって」

「まだ話し始めたばかりだ。
桜にもう少し待てと伝えてくれ」

「了解。
桜、もう少し暇してて」

海の言葉にパンドラは微笑んで応えた。
しかし、顔にはわずかに緊張が走ったのを俺は感じた。

「そこで自然は自らの力を別の者に託し、
思うように動けない自分の代わりに、
奴と戦ってもらうことにしたのだ」

パンドラは俺の目の前に立って言った。

「私たちはその自然の力を託されたものなのだ。
名を“KEEPER キーパー”と呼ぶ」