まぶたの裏が明るくなった。
目を閉じていても、
トンネルから外に出れば光を感じられるのと同じような感覚。
重いまぶたを開ける。
まさにスカイブルーという言葉にふさわしい、
真っ青で綺麗な空が広がっていた。
風が吹き、
草木がさらさらと音をたてる。
心地よい…
久しぶりに穏やかな気持ちになれた。
しかし、それもつかの間。
すぐにハッとした。
「…どこだ、ここ」
俺はクリスマスの夜にバイトが入っていることに嘆きながら、
ピザの宅配をしていたはず。
こんなに暖かく風がそよぐような季節でも、
草の上に寝転がって空を見上げるほど悠長なことをしている暇もないはず。
ムクッと起き上がり、
目の前の景色に言葉を失った。
真っ白な城が俺を見下ろすようにたたずんでいた。
ヨーロッパにあるような、
いわゆる豪奢な城ではなく、
装飾の少ないシンプルな見た目の城。
窓は小さく少ない。
どちらかと言うと城よりも要塞に近い。
しかし、真っ白な城壁が太陽の光を反射し、
神々しささえ感じてしまうほど、
美しい城だった。
「…夢か?もう一回寝てみるか」
再度横になり目を閉じた。
が、またムクッと起き上がって、
なんだかおかしいと気づく。
俺はいつ寝た?
クリスマスの夜にバイトをしてて、
サンタの格好でバイクに乗ってて…
寝た覚えがない。
[自分の名前がわかるか?]
そうだ、名前を聞かれた。
でもあのときは寝ようとしてたわけで、
寝てたんじゃない。
じゃあ、今目の前にある景色はなんなんだ?
