「そうかもね。
でも……それでいいんじゃない?」
「篠山……?」
「アンタが自分でそれに気づいたってことは、あのバカ二人はとっくに気づいてるわよ。
……浦山も大崎も、アンタのことずっと見てきたんだから」
陽斗とイツが……。
「……何で篠山にそんなことが分かるんだよ」
「分かるわよ。
……だって、あたしもアンタと同じだから」
……そうか。
伊沢と松山が結婚して……篠山も俺と同じなんだ。
俺と同じ気持ちなんだ……。
「でも、結婚したからって変わるものと変わらないものがあるでしょ」
「変わるものと……変わらないもの?」
「結婚したら、今までみたいに好きな時に集まってバカ騒ぎすることも少なくなるかもしれない。
でも……だからって、あの二人がアンタを大切に思う気持ちは変わるもんじゃないでしょ」
そう言うと、篠山は小さく口元を緩めた。
「もし風見が結婚するってなったら、きっとあの二人もめでたいと思う一方で、少し寂しさも感じるんじゃないかしら。
今まで自分達を見守ってくれてたお兄ちゃんみたいな存在のアンタが結婚しちゃうんだから」
「……そういうもんなのかな」
「そういうもんよ。
大崎あたりなんて、おめでとうって言いながら泣くんじゃないの?」
……そんなイツがはっきりと想像できて、俺は思わず笑ってしまった。
「あの二人、嫁とケンカしたら絶対アンタに愚痴りに来るわよ。
アンタがいくらウザがっても、あの二人は絶対アンタのそばから離れない」
「ま……ありそうだな。
そんなことも」
「……だから大丈夫よ。
浦山と大崎がアンタを忘れることなんて絶対にない」
篠山は俺の目をまっすぐ見て……はっきりとそう言った。

