「けど、まさか本当にイツが松山と結婚するとはな」

「高校の時は信じられなかったよな。
完全にイツの片想いだったし」

「侑哉、軽くバカにしてただろ」

「してた。
絶対無理だと思ってたし」


新郎の控室を出て、陽斗と二人で話しながら歩く。


「でも……そっか。
イツと松山が結婚したら、もう松山じゃなくなるのか」


陽斗の言葉に、少し思考を巡らせる。

今までずっと松山って呼んできたからな……。


「俺達、何て呼んだらいいんだろうな」

「香織ちゃん、とか呼んだらイツに怒られそうだしね」

「面倒くせぇよな、本当」

「やっぱ無難に奥さん、とか?」

「……無難なのか?それは……」


仮にも高校の同級生だぞ?

見ず知らずの人だったらまだしも……。


「つーか、お前と伊沢が結婚したら俺は伊沢のことを何て呼んだらいいんだよ」

「え?
あー……そうだな……何だろうな」

「何だろうなって……」

「もうさ、苗字で呼ぶっていうんじゃなくて愛称として呼んでいけばいいんじゃない?」

「苗字が愛称ってことか」

「そういうこと」


つまり、これからもずっと『松山』『伊沢』って呼ぶってことだよな。