「……俺は初めて見たよ、あんな奴」

「どう?」

「どうって……そんなの、決まってんじゃん」

「荷物、預かろうか?」

「……頼む」


カバンと脱いだブレザーを岬に渡した。

そして……歩き出した。

俺達がここで見ていることに気づいてないであろう、あのバスケ馬鹿のところへ。


ギィ……と音をたてながらフェンスの扉を開ける。


その音に気づいた高瀬がこっちを向いた。


「……鈴山?」


高瀬の驚いた目。

俺はそれに構わず、さっきゴールから落ちたばかりのボールを拾い上げた。


「なぁ……やろうぜ。
1on1」


高瀬は一瞬大きく目を見開き……すぐに笑った。


「絶対負けねぇからな」

「それはこっちのセリフだ」


こんな奴……初めて見た。

だけど……

コイツと戦ってみたい――

そう……初めて思えた。


「いくぞ、蓮!」

「どこからでも来い、大和!」