「……ん?」


その時、栞奈ちゃんのケータイがブルブル震え出した。

ケータイを確認して少し嬉しそうに微笑むと、ハル君の方を見た。


「あたし、そろそろ帰るね」

「デート?」

「……う、うん」


顔を赤くしながら頷く栞奈ちゃん。

恋する乙女の顔をしていた。


「あ……そうだ。
お名前、教えてもらってもいいですか?」

「あたし?
伊沢七海です」

「七海さん……。
もしかして、ハル君の婚約者ですか?」


あたしとハル君の顔を見てにっこり笑いながら聞いてきた。


「え!?えっと……」

「そうだよ」


あたしの代わりにハル君が答える。

すると、栞奈ちゃんは目を輝かせながらあたし達を見た。


「やっぱり!
大和に報告しなきゃ!」


栞奈ちゃんはバッグを持ってリビングのドアの前に立つと、振り向きざまに口を開いた。


「ハル君、結婚式には絶対呼んでよね!」