「栞奈ちゃん、紅茶でいい?」

「あ、うん。お構いなく……」


梨子がキッチンで紅茶の準備をしているのを横目で見ながら、俺はこの状況をどうしようか考えていた。


「一緒に住んでるの?」

「あー……まぁ、半同棲みたいな」


俺がそう言うと、岬はそっかと言いながら小さく笑った。

だけどそれはいつもの岬の溢れんばかりの笑顔じゃなくて。

どこか陰がある。

大和と婚約したばかりだというのに。


「……何かあった?」


そう聞けば、岬は待ってましたと言わんばかりに顔を上げて縋るような目で俺を見た。


「……家出してきた」

「はぁ?」


予想外の言葉に思わず間抜けな声が漏れる。