「あとどれぐらいなの?」

「え?」

「プリント。
あとどれぐらいで終わるの?」

「え?
あ、えーと……半分かな。
栗山がハイペースで頑張ってくれたおかげでな!」

「半分……。
それ終わったら部活に出れるのよね?」

「おう!」


だから何としてでも早く部活に復帰しなくては!!

そしてまた高瀬先輩に1on1してもらうんだ!!


「じゃあ、また明日手伝ってあげる」

「え……?」

「それで、早く部活に復帰しなさいよ。
先輩達、待ってるんでしょ?」

「栗山……」

「じゃあ、また明日ね」


栗山はそう言って軽く手を振りながらフワリと微笑み……教室を出て行った。


その表情はいつもの気の強い女王様ではなく……普通の、ただの女の子に見えた。


ドキッ……と胸が変な音をたてる。


ドキッ……?


いやいやいや……。


あの栗山だぞ?


俺はどちらかというと岬先輩みたいな女の子らしい人がタイプなんだから!


だから……絶対ない。


絶対……栗山相手に胸がドキドキすることなんてあり得ぬ!



……だけど……。

あの微笑み……栗山のあんな顔……初めて見た。

アイツでもあんな顔するんだ……。


俺はいまだに少しドキドキしている胸をおさえながら……栗山が出て行った扉の方を見ながら立ちつくしていた。


その胸のドキドキが何なのか……自分で納得する答えが出るのは、もう少し後のこと――


―FIN―