冷たい雨に咲く紅い花【後篇ーside実織ー】

その様子が彼はこういう〝場〟に慣れているのだと、
気付かされる。

前に、
紘夜も言っていた。


〝こんな時のために、知り合いの医者がいる〟


でも、

こんな、
こんなこと…


「肩は、弾がかすった状態。擦過射創か。首は…切傷。浅くてよかった。まずは傷口を洗おう。生理食塩水があるからそれで…」

「いや…」

「え?」

「教えてっ、夕綺さんは!?夕綺さんは大丈夫なんですか!?」

涙と血で、
ぼろぼろの顔を吉水さんに向けると、

吉水さんは変わらない様子のまま、
持っていた白い布で
私の顔を拭いてくれた。


優しく、
丁寧に。


前に、

そうしてくれたように…