冷たい雨に咲く紅い花【後篇ーside実織ー】

掌を握りしめて目を閉じると、
ぐるぐると暗い視界がまわる。


気持ちが悪くて、吐き気がした。



ツンとした消毒の匂いがして、
目を開けると、

吉水さんが注射器の準備をしているのが見えた。


「なに…してるんですか?」

土の上で握りしめた手で、
這うように近づくと、

「ん?抗生剤だよ。こういう傷の時は破傷風とかで命を落とす事もあるからね」


命…
って…


「…夕…綺さん、は?」

「実織ちゃん、君の傷をちゃんと見せて」

私の震える声を遮るように言うと、
吉水さんは視線を傾け、
私の肩のあたりと首を見た。


あたりは血だらけで、
血の匂いに吐き気がしたけど、

吉水さんは淡々としていて、
冷静だった。