「君はもとの生活に戻るんだ」 何も見えない世界に、 吉水さんの声が、響く。 「全部忘れて、準君と家に戻るんだ」 全部、忘れて? 戻る? 「きっと、紘もそれを望んでいる」 その言葉とともに、 吉水さんは私がしがみついていたジャケットを、 するりと持ち上げた。 「今タクシーを止めるから、準君と帰るんだ。 いいね。頼んだよ、準君」 「はい」 地面に縛り付けられた様に重い私の体を、 ジュン兄が起こして支えてくれた。 でも、 私の視線は動かない。