「待って、まだ力抜かないで。今オレが処置するから」


え?

吉水さんにそう言われたけど、
なんのことか、
よくわからない。


しばらく呆然とそのままでいると、

「もう、離していいよ」

そう、
優しい声とともに、

吉水さんが私の手を
ポンポン
と、

軽く触れた。



視線を向けると、

紅く染まった私の両手が、
夕綺さんの傷口を力いっぱい押していた。



「〝直接圧迫止血法〟よくわかったね」

手際よく白い布を夕綺さんの傷口にあて、
次々と処置を施しながら、

吉水さんが私に微笑んだ。