「ーー…ん、…織ちゃん。実織ちゃん!」 ガッ、 と、力強く掴まれた腕の感触と 呼ばれた名で、 ハッとなった。 白く濁っていた思考と視界が 覚める。 「よく頑張ったね、実織ちゃん」 ふわ、 優しく大きな掌が私の髪を撫でた。 柔らかい声が 私の名を呼び、 ツンとした消毒の匂いがして 見覚えのある明るい色の長めの髪が、 視界に入った。 「…吉……水、さ…」 意識せずに目の前の人の名が零れると、 一気に気が抜けた。