ぬくもりをもう一度

今、俺の目の前にいる香澄は、

学生の頃と比べたら

大人の女性としての魅力が

増しているが、

投げかけてくる微笑みや仕草は、

あの頃と全く変わっていない。


それだけで、

俺は単純に嬉しかった。


呼びかけたまま

言葉を失った俺に、

郁哉が茶々を入れてくる。


「ちょっと阿久津さん。

 久し振りに会ったのに

 それはないでしょ?

 もう少し飯島さんと

 話しちゃってくださいよ。

 俺はその間、

 食べ歩きしに行ってくるんで」


学生の頃の関係を知っている郁哉は、

俺たちに気を遣って

飛び跳ねるように席を立つと

手を振り去っていった。