ぬくもりをもう一度

少しは期待、

している自分もいる。


けれど、そんなドラマみたいな展開が、

この俺に起こるはずがない。


中庭を行き交う人の中には、

思わずこっちが

目を逸らしたくなるほどの

カップルが、

あちこちにいた。


俺と香澄も、

付き合い始めの頃は

こうだったんだろうな。


そう思うと、

自然と口から微笑がこぼれた。


「あ、阿久津さん!

 もう来てたんですね」


威勢のいい声に呼びかけられた俺は、

その方へ視線を向ける。