ぬくもりをもう一度

その場に投げ捨ててあったバッグを

乱暴に取った野々原は、

未だ小さくなって

ぶつぶつと嘆いている川尻の肩を

がしっと掴んだ。


「あなたもいい加減、

 こんなどうしようもない女、諦めなさい。

 こんな人達を相手にしてると、

 頭がおかしくなるわよ」


そう言って野々原が

川尻の腕をぐいっと引っ張ると、

引きずるようにして

その場を去っていった。


ばらまいたポストイットや紙コップを

そのままにして。


2人の姿が店から消えたのを確認すると、

俺は大きく息を吐いて

全身に溜まっていた力を抜いた。