ぬくもりをもう一度

はぁはぁ、と肩で息をしながら

乱暴に言う野々原の目には、

さっきまで俺に向けていた感情は、

もうない。


『偏った愛』から

『恨みと憎しみ』へと

変わったように感じる。


身体中から発せられるそれが、

俺の心を大きく震え上がらせた。


「アンタが、

 そんな卑劣な人だとは思わなかった。

 私のこと、馬鹿にしないでちょうだい」


それまで“阿久津くん”だった呼び方が

コロリと変化する。


それが、今の野々原の俺に対する

感情を表しているのだろう。