ぬくもりをもう一度

「……くせに……」


視線を節目がちにして、

野々原がぼそっと呟く。


その声があまりに小さ過ぎて、

俺の耳には届かなかった。


口を閉ざしたまま

野々原の様子を見ていると、

キッと鋭い視線を俺に向けて

奇声にも似た声を出し始めた。


「私のことなんか、

 何も知らないくせに!」


「あぁ、そうだな」


「じゃあなんで、

 私のこと全て知ってるような

 ことを言うのよ。

 私が“愛し方、愛され方”を

 知らないですって?

 なんで阿久津くんが

 そんなこと言えるっていうの」