ぬくもりをもう一度

コイツも、かなりひねくれた

感情の持ち主であることは

間違いない。


ふうっと息を吐くと、俺はもう一度、

今度はなだめるように話始める。


「野々原が俺のことを

 そこまで想ってくれているのは、

 ありがたいよ。

 俺もかなりクセのある男だからね。

 でも俺の心の中には、

 野々原のスペースはないんだ。

 今までも、そしてこれからもずっと」


俺の言葉を訊いた瞬間、

野々原がケラケラと笑い始めた。


「だから、

 そんな言葉で私が納得すると思う?

 こんな女のどこがいいっていうのよ。

 私の方が何倍も阿久津くんのこと

 理解してるっていうのに」


そう言って、野々原が突然、

ブランドバッグを勢い良く

ひっくり返した。


ガサガサと出て来たものを見て、

全身の血の気が引いていくのを感じた。