ゆっくり確かめるように

息を整えると、

俺は小さく頷いてから言葉を続けた。


「俺がこんなこと

 言える立場じゃないのは、

 十分分かっているつもりだ。

 結果的に、俺が川尻さんから

 香澄を奪うような形に

 なってしまったから……」


「そうだ。

 お前なんかが香澄ちゃんの前に

 現れなければ、

 僕たちは幸せな結婚をしていたはずだ!」


俺の言葉を待たずに、

川尻が食いつくように叫ぶ。


川尻の気持ちも、

分からないわけではない。


しかし俺は、

血走る目を向け続ける川尻を

そのままに話し続ける。