俺はテーブルを激しく

叩きつけると同時に、

立ち上がって大声を上げた。


瞬間、穏やかだった店内が

すうっと固まっていくのを感じた。


その場にいる人に申し訳なくなって、

俺は小さく咳払いをすると

素早く腰を下ろした。


「もう止めて!

 私と亨くんを縛り付けないで……」


香澄が、か細い声で

精一杯の気持ちを口にする。


その姿を見た俺は、

2人の目をじっと見つめて口を開いた。


「お願いだから目をそらせず、

 ちゃんと、現実を見てくれないか。

 ―――野々原、そして……川尻さん」


小さいながらもしっかりとした

口調の俺の言葉に、

ようやく野々原と川尻の顔から

笑顔がすうっと消えていった。