笑いが止まらない野々原に代わって、

今度は川尻が口を開く。


「最初、彼女から

 電話がかかってきた時、

 正直戸惑ったよ。

 けれど、話を聞いていくうちに

 手を組もうという気持ちになった。

 お互い、プラスになることだからね」


そう言って、

川尻は甘い視線を香澄へとおくる。


その視線をかわすように、

香澄が素早く顔をそむけた。


この男も、野々原も、

もはや正常な人間じゃない。


自分の欲望を満たすためだけに、

人の感情を無視して突っ走る

“魔物”と化している。


「私は阿久津くんと、

 川尻さんは香澄さんと

 それぞれカップルになれば素敵でしょ。

 誰も1人にならなくて済む、

 最高の組み合わせじゃない」


満面の笑みを浮かべて、

野々原が一段と声を弾ませて言った。