ぬくもりをもう一度

「香澄が迷ってるんだったら、

 一度、婚約を解消した方が

 いいかもしれないな」


「婚約を……解消?」


小さな声で呟く香澄に、

俺は黙ってこくんと頷く。


きっと香澄はよくいう、

マリッジブルーなのだろう。


本当の友達だったら、

その気持ちを落ち着かせるよう

努めるだろう。


でも今の俺は、

ただの卑怯者でしかない。


落ち込んでいる香澄に

漬け込もうとしてるだけなのだから。


気付かれないように静かに息を吐くと、

俺の中にたまっていた気持ちを

香澄へぶつけようと口を開いた。