ぬくもりをもう一度

フォークとナイフを

ぎこちなく動かしながら、

料理を口に運んでいく。


それは繊細で、こんな俺には

贅沢すぎるものばかりだ。


「ねぇ、亨くん」


苦手なワインを軽く含んだ香澄が、

優しい声を俺にかける。


お酒のせいだろうか、

香澄の頬がほんのり赤く

染まっているように見えた。


「ん?」


フォークとナイフを皿の両側へ置いて、

視線を合わせる。


目が合った瞬間、

香澄の瞳が小刻みに震えた。


「……私、このまま結婚しちゃって、

 いいのかな」