ぬくもりをもう一度

ウェイターにコースを頼むと、

俺たちはワイングラスを重ね合わせた。


含んだ瞬間、

口の中いっぱいに芳醇で厚みのある

香りが広がる。


この景色といい、

目の前に愛しの人がいる

このシチュエーションでは、

酔いがすぐにまわってしまいそうだ。


香澄は満足そうににっこりと笑って、

眼下に広がる景色を眺める。


その姿があまりに美しく、

俺の胸が高鳴る。


「急に食事に誘って、ごめんな」


俺の言葉に、

香澄は目を丸くしたかと思うと

首を横に振った。


「そんなことないよ。

 私の方こそ、仕事中だったのに

 電話しちゃってごめんね」


たとえどんなことがあっても、

俺を絶対悪く言わない香澄の優しさが、

気持ちをどんどんと高ぶらせた。