「じゃあ、行くか」


「もうお店、決まってるの?」


「あ……。

 俺が決めちまって、よかったか?」


そうだよな。


香澄にだって、

きっと行きたい店があったに違いない。


なのに、そんな香澄のことを無視して

突っ走ってしまってバツが悪い。


けれど、香澄は嫌がる様子もなく

むしろ満面の笑みを見せて、

大きくこくんと頷いた。


「亨くんのオススメのお店、

 私、行ってみたいな」


「じゃあ、行くか」


バクバク高鳴る鼓動をそのままに、

俺はすっと香澄の柔らかな手を取り

ゆっくりと歩き始めた。