「……よかった、まだだ」


駅の出入口にはまだ、

香澄の姿は見えない。


でも、ここは男である俺が

待っていなければ格好がつかないだろう。


心を落ち着かせるように呼吸を整えると、

俺はすっと席を立ちカフェを後にした。


そのまま九段下駅の出入口へと向かうと、

俺はあくまでも自然な姿で

壁にもたれるように立っていた。


期待するように、

キョロキョロ視線を動かすなんて、

女から見たら格好悪く

映ってしまうだろうから。