早く、少しでも快適に

過ごせるようにならないのだろうか。


べっとりと肌につく空気を

切るように手で身体をさすりながら、

余計な汗をかかないように

ゆっくりと歩を進める。


周りのサラリーマンもまた、

顔を歪ませて早足で歩く。


きっと一刻でも早く、

冷房のきく駅へと入りたいのだろう。


空はこんなにも綺麗な茜色を

しているというのに。


九段下駅近くにあるカフェの前に着くと、

俺はゆっくりとドアを開いた。