―翌日―


「高瀬先輩!高瀬先輩!」


呼ばれて振り返ると、一年生が楽しそうな顔をしながら俺の方を見ていた。

確か名前は……

広川雅樹―ヒロカワ マサキ―

そうだ、ヒロだ。

よくみんながそう呼んでる。


「どうした?」

「俺……昨日見ちゃいました!」

「昨日?」


昨日……俺、何かしたっけ?


「住宅街のド真ん中で高瀬先輩と岬先輩が……」

「ちょっ……ストップ!!
それ以上は言うな!!」


昨日って……あのことかよ!


「何でお前が……」

「俺の家、あの辺なんですよ。
昨日、帰りにたまたま……」


まさか知り合いに見られてたとは……。

……恥ずかしすぎる。


「大和と岬がどうしたって?」

「あ、鈴山先輩」

「何でもない。
何でもないから……本当に」


ふぅ~ん、と蓮が怪しげな目を俺に向けた。


「……ま、大体予想はつくけど」

「え?」

「お前らの仲が良いのはいいことだけど。
イチャつきすぎんなよ」


なっ……何で分かったんだ……。



そそくさと練習に戻る蓮。

マネージャーとしての仕事をこなす栞奈。

一生懸命練習に取り組んでる部員達。


俺達バスケ部は先輩が卒業した今も、変わらずに元気でやってる。


そして……今年こそは。


誰もが思っていることを胸に、俺は転がっているバスケットボールを拾い上げた――