……今日は部活に来るんだろうか。

……それすらも分からない。


まだ誰も来ない……朝早い体育館。


……声が聞きたくなった。

大和ってあの声で呼んでほしくなった。

……顔がみたくなった。

あのチワワみたいな顔を。


……どうしようもなく……会いたくなった。


「……ダメだ……もう」


一度思ったら、もう止められなかった。

バスケどころじゃなかった。


……俺は床に転がったボールを放置したまま体の向きを変え、出口の方に歩いて行こうとした。


……でも……


「……大和?」


俺が体育館を出る前に……ある人物が中に入ってきた。


俺よりも小さな人影……。


「……栞奈……」


栞奈は俺の顔を見ると、いつものようににっこり微笑んだ。


「早いね。
大和が早起きなんて、珍しい」


栞奈は特に気にした様子もなく俺の横を通り過ぎて、隅の方に転がっていたボールの方へと歩いていった。


「栞奈……?」


栞奈はボールを拾い上げると、頭上にあるゴールリングを見上げた。