あたしはこの前の中庭のベンチへ向かった。

多分……ここにいるはず。


「………いた」


あたしの予想通り、大和はこの前と同じ場所で項垂れていた。


だけど……何となく声をかけるのを躊躇った。

何でだろう……。


……でも、もう体育館を閉めて帰らなきゃいけないから……。


「……大和」


あたしが声をかけても、大和はこの前みたいに顔を上げることはなかった。


「……何?」


下を向いたまま……言葉が返ってきた。


「あのね……もう体育館閉めなきゃいけないから」

「……あぁ……いいよ、俺がやっとくから」

「けど……」

「……蓮にもそう言っといて。
すぐ戻るから開けっぱなしでいいって……」


大和………。


「でも、大和……」

「栞奈」


……いつもとは違う大和の鋭い声が聞こえ、あたしは思わず口を閉じた。


「……悪いけど、一人にしてくれ」


「っ……………」


……大和の言葉が……あたしの胸に重く、深く突き刺さった。


「……うん、分かった」


それ以上はもう何も言えなくて……黙ってそこから立ち去ることが精一杯だった。