部活終了時刻になっても大和は帰ってこなかった。

どこにいるのかは……何となく分かっていた。


「……相当ショックだったんだろうな」


片づけをしながら蓮ちゃんがポツリと呟いた。


「え……?」

「アイツ、一年からずっとレギュラーでさ……一年の後半からはずっと試合から外れたことないだろ」

「……うん」

「だから……ショックだったんだよな、きっと。
俺らにとってはこれが最後の挑戦だし。
いつ負けて終わるかも分かんねぇし」


……いつ負けて終わるか……分からない。

どの試合が自分にとっての引退試合になるのか……分からない。


「……蓮ちゃんには……分かるんだね。
大和の気持ち……」

「え……?」

「……あたし……よく分かんない。
大和の気持ちが……選手の気持ちが……」

「……岬……」


これでマネージャー六年目なのに……。

……分からないの。

全然……ピンとこない。


「……とりあえず、大和呼んでくるか。
荷物持って帰ってもらわなきゃいけねぇし。
岬、どこにいるか分かる?」

「あ……うん。
多分……。
……呼んでくるね」


あたしはそう言って体育館を出た。