長雨続きのジメジメした湿り気が、私の心も重くしていた。
こんな雨でもいつもと変わらず出かけてゆく、兄さまが羨ましかった。
そんな長雨が切れて、久しぶりに雲間から陽が差し込んだある日。
思いもよらないお客さまが、うちへやってきた。
「―――さき子さま!?」
出迎えた私は、驚いて目を見開く。
「おゆきちゃんがなかなか遊びに来てくれないから、私が来ちゃった!」
さき子さまは、満面の笑みを見せる。
その大輪の花のような笑顔が、梅雨間に差し込むお日さまを連れてきたのだと思えた。
「……どうしてうちへ来てくれないの?母上も私も、来てくれるのを楽しみにしてるのに」
私の部屋に招いてお茶を差し出したとき、恨みがましい目をしたさき子さまにそう訊ねられた。
私は言葉を探すけど、どう言っていいか迷ってしまい、
「……申し訳ありません」
としか言えなかった。
「もしかして雄治のせいで、うちに来づらい?」
いきなり的の中心を射られて、動揺して私は目を伏せる。
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