そのあとしばらくしてから、母さまがお戻りになられた。
くら子さまと気が合ったようで、やっぱり話に花を咲かせていたらしい。
「おふたりとも、お前が来なくて残念がっておられましたよ。
足の塩梅が良くなったら、お前もお礼に伺うのですよ」
「……わかりました。そうします」
母さまの言葉に私は素直に頷いた。
けれど。それから何日過ぎても、私はいっこうにくら子さまのところへ行く勇気を出せないでいた。
いつもの生活を黙々とこなしていた。
―――季節はいつのまにか、梅雨に入っていた。
雨に濡れてよりいっそう緑が引き立つ庭を眺めて、私はため息をついた。
………雨は好きじゃない。
家の中に閉じ込められた感じがするから。
お前は外に出られないぞと、雨に笑われてる気がするから。
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