この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜




 母さま達とのお茶の時間を終えたあと、私はまっすぐ兄さまのお部屋に向かった。

 兄さまのお部屋の前で座ると、障子の向こうへ声をかける。



 「……兄さま?入ってもよろしいですか?」

 「ああ」



 兄さまの応じる声が障子の向こうから聞こえると、私は静かに中へ入った。

 兄さまは書物を読んでいて、書見台に向かってピンと背筋を伸ばし、こちらに背を向けた状態で静かに訊ねてくる。



 「休憩は終わったか」

 「はい。あの、兄さま。私……お訊ねしたいことがございます」



 本当はすぐにでも聞きたかったこと。

 でも聞いてしまったら、夢から覚めてしまうような気がして。

 真実を知るのが、なんだか怖くて。

 ズルズルと聞けずにいたこと。



 兄さまが私を振り返る。
 すべてを承知しているかのような表情だった。



 「お前の聞きたいことは、わかってる。あいつの……雄治のことだろう?」



 ――――ゆうじ。



 「あのお方の名は、やはり雄治さまとおっしゃるのですね?」

 「そう。永瀬 雄治。それがあいつの名だ」