話を聞いていたくら子さまが、確かめるような口調で問う。
「けれど、その子に会える当てはなかったのでしょう。
あなたはひとりで出てきて、そのあとどうするつもりだったの?」
「それは……あの方とお会いした場所まで行けば、もう一度会えるんじゃないかと……。
けれど、そこに行くにも迷ってしまって……」
さき子さまが、後ろで座るくら子さまのお顔を窺う。
くら子さまは小さくため息をつかれた。
「少し軽率すぎたようね。八十治さんがその子のことを教えないのは、無理からぬことだわ。
今日はもうお屋敷にお戻りなさい。
どうしてもその子にお会いしたいのなら、お兄さんにお頼みして会わせてもらいなさい。
あなたのしていることは、とても無謀で、家族に心配をかける愚かな行為よ」
厳しい言葉だった。
「……はい。申し訳ありません……」
諭されうなだれる私に、くら子さまは困ったように笑い、
「わかればいいのよ。さあ、そのお饅頭を食べて元気をお出しなさいな」
そうおっしゃりながら、私に近づいて優しく肩をさすってくれる。
「……はい……」
.

