外の明るさに目が覚めた。





ああ……もう朝なんだ。



こんなに明るいなんて、

もう陽が
だいぶ高いのかもしれない。



母さまやまつは どうして
起こしてくれなかったのかしら。





だるい身体を起こして、
布団から這い出る。



障子からは
まばゆいばかりの
光りが漏れていた。





…………静かだわ。



どうしてこんなに
静かなのかしら?





秋なのに
まるで夏の陽射しのような
外の眩しさに、

立ち上がって障子を開ける。





そして 息を飲んだ。





目に沁みるほどの
まばゆい光りに包まれた庭に、
誰かが立っている。



そこにいたのは――――。





「……利勝…さま……?」





庭に立ち、懐かしそうに
空を見上げていた利勝さまは、

私を振り向き ニッと笑った。





利勝さまは平服なままの
気楽なお姿だった。

腰にも小刀しか
手挟(たばさ)んでおられない。



けれどもその小刀は、
昨夜私がこの手に握ったものと
まったく同じ。





これは………夢?



それとも今までが
悪夢だったの?





どちらかわからない
不思議な感覚の中で、

利勝さまに会えた
喜びだけが

全身に染み渡ってゆく。





利勝さまは
私を安心させるように
笑いかけると、

手を差し出して下さった。





トクン、と胸が鳴る。



ためらうことなく
その手を掴む。



ごつごつと固い感触の中に、
温もりを感じた。





利勝さまは思いのほか
うれしそうに笑って、

私の手をギュッと握ると
そのまま庭の外へといざなう。





私は後に続いた。

縁を下りようと足元を見る。



不思議なことに
私も粗末な着物の姿ではなく、
きれいな薄色の着物を着ていた。



それに……よくよく見れば、
この庭は 林家の庭だわ。



そして 履物をはく時に気づく。





――――足が。

私の左足が動く。





硬く石のようだった左足は
しなやかに動き、

早足で進む利勝さまに
遅れることなく
ついてゆける。





「と……利勝さま!

私……私、走れます……っ!」





走れることに驚く
私の声に振り向くと、

したり顔で笑う利勝さま。



利勝さまの足は
どんどん早くなる。



私はそれについてゆける。



ドキドキと胸が高鳴る。



家の門をくぐると、

どこまでも広く
果てのない青空が
広がっていた――――――。