まつは目を細めて、私をやさしく叱咤する。
『強くおなりなさい』と。
そういえば、利勝さまにも言われたんだった。
『お前も会津藩士の娘なら、自害するのは、せめて何かの役にたってからにしろ』と。
―――役に立つために、強くなれ。
きびしくもそう聞こえた利勝さまの声を思い出して、なぜか頬が緩むのを感じた。
こんな私でも役に立てるかわからない。
けれど。
『守りたいものがあるから、人は強くなれる』
私にもそれがあるから、強くなろうと心に決めたんだわ。
私は精一杯 まつに微笑んだ。
「……それも大丈夫よ。利勝さまは、私のひどい顔を見慣れてるの」
優しいまつの手から離れ、立ち上がる。
キュッと唇を噛みしめて、横たわるたくさんの遺体に向き直った。
ひとつひとつの遺体を見ながら、利勝さまのもとへ、一歩一歩 足を伸ばす。
遺体はみな、血痕と思われる黒ずんだ液体が染みついていて、ひどいものはすでにカラスにつつかれた痕が残っていた。
銃や衣類、胴乱などの遺品があちこちに散乱するなか、足場を探して、ゆっくりと足を進めてゆく。
見知ったお顔も見つけた。
井深さま。……俊彦さま。
そして――――。
足を止めて、その場に座り込むと、精一杯微笑んで静かに語りかけた。
「利勝さま……。私……ちゃんと約束を果たしにまいりましたよ。
だって……待っていて下さったんでしょう?」
会いたくて。触れたくて。
愛しくてたまらない。
そんな あなたのもとへ。
私はようやく、あなたにたどり着くことができた……。
.

