それは、あの別れ際に目に焼きつけた色より少し黒ずんでいたけれど、それでも すぐにわかった。
白虎士中二番隊の出陣を見送ったとき、草色の上衣を着ていたのは、利勝さまだけだったから。
だから、あそこにある草色は、間違いなく。
「利勝さま………!!」
利勝さまは ここに居られた。
足元から何かに力を吸い取られたかのように、身体が崩れ落ち、ガクリと両膝をつく。
「ああ……!そんな……!! 利勝さまが……!利勝さまがっ……!!」
絶望と悲しみが身体の奥底から突き上げて、それが涙と鳴咽となって溢れてくる。
その場で大声をあげて泣いた。
別れてから今まで、胸に抱えていた不安や恐怖、
そしてひと握りの希望を、
すべて投げ出して 私は泣いた。
「ゆきさま……!!」
その様子を見てすべてを悟ったまつが、涙目ながら私を抱きしめてくれる。
それにすがって、なおも泣いた。
あそこに横たわるのは、私の愛しい人。
初めて恋を教えてくれた。
たくさんの宝物をくれた。
私にとって、唯一無二の存在。
利勝さま。
利勝さま………!利勝さま………!!
私の心にあった、あたたかなともしびは、
新しい世へと進みゆく時代の渦に、飲み込まれるように消し去られた。
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