山道を登りきると、いっきに視界が開けた。
ここからは城下がよく見える。
完全に息があがり、私はしばしその場で、轟音の中 まだあちこちから黒煙が立ちのぼる城下を見つめた。
お城は大丈夫だろうか。
利勝さまや 兄さまは………?
答えを知るために、少し緩やかな下り坂となって続く山道に目を落とす。
そこで ハッと息を飲んだ。
戦慄が全身を走り抜け、背筋が凍る。
下り坂となる山道からそれた波打つような稜線の下に、見ただけで十人はいるだろう若武者の亡骸が、無惨な姿で横たわっていた。
「……ひっ!!」
息があがってカラカラに渇いたのどに悲鳴が張りつく。
すぐ目をつぶって背を向けたけれど、一瞬で焼きついた光景は、まぶたの裏でもはっきりと浮かびあがり、私を震えあがらせた。
――――それでも 見なければ。
もう一度しっかりと見て、確かめなければ。
あまりにも恐ろしくて、全身がガタガタと震える。
(どうしよう……!勇気がでない……!)
利勝さま!利勝さま!!
あなたはそこに居りませんよね!?
「―――ゆきさま!」
呼ばれて見ると、遅れて後を追ってきたまつと弥平太さんが私に駆け寄る。
「!……まつ!」
「……これは……!なんて酷い……!」
まつも私の後ろに広がる、凄惨な光景に言葉を失っていた。
けれどまつと弥平太さんが来てくれたことに勇気づけられて、乱れた呼吸を整え、もう一度振り返ろうと心に決める。
再びまぶたを閉じて、最後に見た利勝さまの笑顔を宝物の中から引き出した。
――――利勝さまとの約束。
あなたを見つける。必ずやり遂げる。
でもどうか、今がその時ではありませんように。
意を決して、振り返った。
そこに横たわる、たくさんの亡骸を見渡す。
それはやはり、城下で見送った白虎隊の方がただった。
本当はとても、正視することなんてできない。
それでも利勝さまとの約束につき動かされ、それが心の支えとなって見据える勇気を与えてくれる。
そこにあなたはいないで と、願いながら。
――――けれど。見つけてしまったの。
その中に、他の方がたと同じように横たわる
愛おしい草色の姿を。
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