この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜




 辺りを見て回ってきた朔じぃが戻ってくる。
 朔じぃは浮かない顔で、首を軽く横に振った。

 多少 期待の色を見せていた母さまや私は、その動作に肩を落とす。



 「……やっぱり気のせいでしたね。ごめんなさい……」



 もしかしたら敵の目を逃れた兄さま達が、近くをさまよっておられるかと思ったのに。

 うつむく私の肩を、母さまは優しくさすって小声で励ました。



 「きっと八十治さん達は、お城へ戻ったのよ。今頃は、お殿さまのそばで戦っているはずよ」



 昨日の昼過ぎから降り出した雨はどんどん激しくなり、岩屋の中に避難していた私達は雨や風をしのげたけれど、

 この篠つく秋雨の夜を原野で過ごしただろう利勝さまや兄さま達を思うと、心配でたまらなくなる。


 雨は今朝がたから少しずつ止んで、どんよりとした雲も切れ切れになっている。

 山の向こうから聞こえていた銃声や砲声はどんどんと近づいてきて、今では城下に絶えずその音を轟かせていた。

 お城の方角には黒煙が立ちのぼり、炎が吹き上がる。


 味方が苦戦を強いられているのが、嫌でもわかる。


 私達の住み慣れた町並みが、あの炎の中に呑まれてゆくのかと思うと、胸がつぶされる思いだった。


 敵軍はあっという間に城下に押し寄せた。


 こんなに早く敵の手が伸びてくるなんて、誰も予想していなかった。

 あれからまだ、たった一日しか経っていないのに。


 戸ノ口原へ向かったという利勝さまや兄さまは、どうなったのかしら?


 (まさか、もう………?)


 首を振る。


 大丈夫。きっとお城に戻って、がんばって戦っておられるはずだわ。


 お城はまだ落ちてない。


 様子を見に行った村人が、味方の軍は城下に火を放ち篭城戦に突入したようだと話していたもの。



 くら子さまとさき子さまは、無事にお城へ入られたのかしら?

 お城に戻った利勝さまとお会いしたかしら?

 おふたりもご無事だといい。


 ここからでは 何もわからない。


 ただただ、皆さまどうかご無事でと祈ることしか………。