雄治を抱きしめた。

身体中が熱い。

怒りと悔しさが、涙となって溢れ出る。



(……なぜだ!! なぜ 俺を刺さなかった!?)



もう刺せる力も残っていなかったのか?

それともこの場になっても、お前はまだ、俺に生きろと願うのか……!?



「なぜだ……!! 答えろ!! 雄治!!」



どんなになじっても、激しく揺すっても。
もう雄治は答えない。


声を押し殺して泣いた。

それは、つかの間だったと思う。


こうしてはいられない。


首をめぐらすと、ほとんどの者がすでに自害して果てている。



(このままでは死に遅れてしまう)



そっと、雄治を横たわらせた。

その手に奴の血で濡れた自分の小刀を握らせ、地面に落ちていた雄治の小刀を手に取る。

その曇りのない刃を見つめて、つぶやいた。



「……雄治。お前がどう思おうが、俺はお前と ともに逝く。
……約束、しただろう?」



雄治の顔を見つめると、その死に顔が、「くそ真面目な奴め」と 言っている気がした。



だが雄治。もし深手を負っていたのが俺だったとしても、きっとお前も同じ道を選んだだろう?

見つめていた目が、自然と細まる。



(雄治。待ってろ。俺を置いて逝くな)



残りの力をすべて込めて、己の心臓めがけ、雄治の小刀を突き刺した。



「ぐっ……!!」



全身に痛みと熱が広がった。

のどが渇いて張りつき、息ができない。

だが 意識はいっこうに白濁しない。

思いとは裏腹に、身体は懸命に息をしようと抗う。



心臓を外したか。もう一度 刺さねばなるまいか。



「……くっ」



刀を抜いてみた。

傷口から血が噴き出し、残り少ない力もそこから流れていく気さえする。



とにかく早く死のうと必死だった。

早く雄治に追いつこうと。



しかし ダメだ……。もう刺す力が残っていない。



意識だけは はっきりしていて、早く死ねる案はないかと考えをめぐらす。



このままでも いずれ死ぬか。

だがそれを待つのは、雄治に追いつけない気がしたし、この苦しみが永遠に続くようにも思われた。





――――誰か。





「誰か……!介錯を……!!」



声の限りに叫んだつもりだが、渇いたのどから発せられたそれは、とても弱いものだった。