この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜

 


今にも消えそうな、か細い声のくせに。
雄治の瞳の強さは変わらない。

いつもいつもこの瞳に、奴の意志の強さを感じていた。





『お前を 生かしたい。そしてゆきの元へ帰したい』





雄治……お前も。

お前も、俺と同じことを考えていたなんて。



「自分の気持ちに正直になれ……八十。

俺がいなくなれば、あいつは……きっとお前を見てくれる。

この混乱の中なら、お前達が兄妹でなくなる日も来るかもしれん。

だから……あきらめるな……!!」



最後の力を振り絞って、そう言ってくれる。



俺のために。………ゆきのために。



一瞬 ちらりと思い描いてしまう。



知らない土地で、ゆきとふたりで暮らす。
それはもちろん兄妹という間柄ではなくて。



そんな馬鹿馬鹿しい夢想に、つい手を伸ばしてみたくなる。





――――けれど。





「……馬鹿やろう。言っただろう?

たとえ お前がいなくとも、あいつの気持ちは俺には向かんと。

何度も言わせるな。お前は本当に大馬鹿やろうだ……」



俺は、笑っていた。もう決心はついていた。



雄治から視線をそらし、皆を見渡してきっぱり告げる。



「俺もここで 腹を切る」

「!!………八十!!」



「ダメだ」 と 声を漏らす雄治に、もう一度 顔を向ける。


もう、振り返りはしない。



「雄治……俺は。どちらかを選べと言うのなら、ただの男としてゆきを選ぶより、会津武士の誇りを持って死ぬことを選ぶ。

………お前と ともにな」



目を細める俺を見つめて、それでも雄治は、顔を歪めて何度も首を振る。



「雄治。一緒に逝かせてくれ。
頼む……俺を卑怯者にさせてくれるな」



なだめるように優しく声をかけても、雄治は(かたく)なに頷かない。